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2011年6月27日 (月)

デンデラ

読了

ここから先はネタバレ。

これは老婆の話ではない。
登場人物は全員70代から100歳までの老婆たちで、労働のみに明け暮れても食べるのが難しい 口減らしをしなければならない寒村に育った老婆たちなのであるが。

主人公は本当に死ぬつもりで「お山」に入ったのだが 意に反して助けられてしまったがために自分のレゾンデートルを生まれて初めて模索しなければならなくなる。アイデンティティなどというものを考えたこともなく、「村」の中で他人と関わる余裕もなく生きて来た70歳が、デンデラで生まれて初めて他人の考えや行動について思索し 他人と関わる生活を始めるのだ。他人の考え、というものに触れて 自他の違いに気付き、それが消化できずに荒れる。

超強力な羆の襲撃が何度もあって 描写は血みどろドロドロなスプラッタなのだが 作者が描きたかったのは 殺された老婆たちの死に方を見て「どう生きるか」ではなく「どう死ぬか」という考え方を主人公が獲得するまで なのだろう。
山に捨てられて無為に死ぬのを受け入れていた状態から そういう無意味な死に方を拒否する境地に至るまでの成長(?)の物語だったのだな と読み終わってから気付いた。

なので会話が寒村の老婆のものではない。
使われている用語 単語も まともな教育を受けたことがない(と思われる)老婆が使う言葉ではないのだ。

性格の書き分けが卓越している。
中には民主党の某代議士そっくりの物言いをするホノという老婆がいて「根拠はどこにあるのですか?羆がそう喋ったのですか?」には夜中なのに 大笑いしてしまった。ホノの発言は最初から頭の中で某代議士の事業仕分けの時の口調をアテレコして読んでいたが これが実にピッタリなのである
happy01

これは道具立てはケレンに満ち溢れているけれど 娯楽小説ではなく純文学の範疇なのだと思う。

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